演技の優劣=うまいヘタの基準
実践前にもう1つ、これ知らなきゃ話にならないね。
「演技のうまいヘタの見分け方」
- 同じようにセリフしゃべって、同じように動いているのに、何が?どこが?違う???
- 誰でも「演技のうまいヘタ」は明確に分かるのに、その「基準」はわからない。
- スポーツなら点数や勝敗って明確な基準があるけど、演技の優劣はどこで見分ける?
ホント不思議だよね!
(……でもまあ、だから誰1人プロとして成功してなくても、なぜか流行っている演技レッスンとかこの世に存在できるんだよね。基準ないんだから)
僕たちはこれまでとてもたくさん「演技」を見てきた。だからその膨大なサンプルの中で、これは演技がうまい、これはヘタってなんとなくは分かる。料理みたいなもんだね。お母さんの料理しか食ってなければ、それが旨いか不味いかはわからないけど、いろんな店を食べ歩くと「基準」が生まれる。
料理はうまいと「ハッピー♡」になれるが、演技ももちろん「うまい演技」を観ると「ハッピー♡」を感じる。それで僕たちはこれまで「演技のうまいヘタ」を考えてきたんだな。
じゃあ具体的には、それってなに?そう聞かれるとうまく答えられる人なんていない。「この料理がなぜおいしいのか?」ってのと同じだね。そこ分からないと「もっとうまく!」できないから、プロにはなれないよね?
で、レッスンではこう言ってる。
「演技のうまいヘタ」は前後左右で決まる!
なんじゃそりゃ?と思うが、つまり、その役の人の「過去(前)」や「未来(後)」、そしてその人の今いる世界のいろんなものが、その人の演技から伝わってきたなら、それが演技がうまいということ。
たとえば、この絵の例での「前後左右」は……
- 前(過去)が、「脱サラ」
- 後(未来)が、医学部合格
- 左右が、高校で将来を誓った彼女や病気の母親
ってことだね。
よく「感情表現」がどうの、「気持ち」がこうのとかいうけど、そういうのってその「前後左右」があるから伝わってくるもんなんだよね。ただ大号泣して叫んでいても、それが「何に対して、どう悲しいのか」が伝わってこなければ、それはただの「アブナい人」にしか見えない。
つまり、前にも書いた「何に注意を向けているか?」ってことなんだよね。
つまりは、「劇的空間」の中の、小道具、大道具、過去から未来に続くストーリーの展開、そして相手役、そのすべての存在との「関係性」。それを自在に創造できる力こそ、演技のうまいヘタってことだね。
それを「コンテキスト(文脈)」という言葉で言い表したのが、あの山ほどすごい肩書き持ってる劇作家の平田オリザさん。著書を読むと、いい感じの所まで行ってるんだけど、結局ご本人自身が役者じゃないので、「演技力」そのもの、またどうすれば演技力が向上するかについてはあいまいなまま。芝居見てもただ突っ立ってしゃべりあってるだけだからね。・・・って、俳優の端くれ風情が偉そうなこと口走ってしまいました。
「7つの基本フォーム」で前後左右を伝える
さて、では具体的に「前後左右」を表現して観客に伝えるには、どうすればいいのか?それこそが、「7つの基本フォーム」を使うってことなんだ。
それをうまく使うことによって、「その人がどういう人生を生きてきたか?」とか「これから何をしようとしているか?」とか「いま、何がこちらに向かっているか?」とか「そのケーキはどれだけおいしいのか?」「美しいその人をどうしたいと思っているのか?」とかを自在に観ている人に伝えることができるんだ。
「えっ!ちょい待って!?その役の「前後左右」って見えないよね?どうやって伝えるの?」
というあなた。そう、もちろん「前後左右」は見えない!だから、他の何かを使ってそれを「ほのめかす」ことが必要だ。その「ほのめかす」道具が「7つの基本フォーム」ってこと。
○しろうとでもできる「ふつうの演技」
そこに見えるもの(セリフや表情や動き)だけを見せる。
◉プロの「素晴らしい演技」
技術を使って、そこに見えないもの(前後左右)を見せる。
スッキリしたね。プロの技術である「7つの基本フォーム」を使うだけで、その人が「その世界」に生きて、何をどう感じて考えているかが観客にビンビン伝わる。そんなお得なプロ演技のコツ、いよいよ次から解説して行きましょう!
_〆(・ω・*)……タカシ