プロの演技とは何か?その基本理論
普通に演技する分には、結果さえよけりゃ何でもいい。だけど教えたり学んだりするには必ず「理論」が必要だ。
理論っていうと難しく聞こえるけど、「なんでそれをやるかっていう根拠とか理由」だね!それがなければその技術がホントに役立つのか?どう役に立つのか?なんてわからない。
スポーツでも楽器でも、勉強でもバイトでも、上手くなるには、単純明快な「理論(知識)と技術」が必要!
それ教えてくれないで「とにかくやれ!」とか言うところでは習いたくないよね?習っても上達する気しないし。
で、プロ演技の基本理論。
プロで演じるには、アマチュアでそれを楽しむのとは全然違う視点が必要なのだ。
これウィナーズラボには、ヤバいくらい深いいろんなものがあるんだけど、その中から自分がホントにオーディションや現場で役立ったもの、もっとも重要だと思うものをかいつまんで、僕の「独断と偏見」でピックアップしてみた。
もっと細かなことはコーチが、メチャクチャ深くブログの他の記事や演技の参考書の数々で解説してくれるだろうから、ここではごくごく簡単に。手っ取り早く理解したい人は、僕の書くことだけ読んでくださいね! あっいや……その……
【プロ演技の大原則】
❶ 客(観客、またはスタッフ)に、求められているものを見つけそれを演じる
❷ 観客は、俳優が注意しているものに注意する
「プロ」とは仕事でそれを行う人のこと。だから、演技の仕事も当然、「お客さんがやって欲しいことをやる」ってのが重要だ。
ここ、とても重要で忘れがちなところ!!!
僕たちにとって演技は「仕事」なんだよ。お金もらうんだよ!お客さん喜ばせてなんぼ!
常にセンサー働かせて、「いま求められているもの」を知り、それを、またはそれ以上のものをやることができなければ、当然プロとは言えんわな。バイトだって自分勝手にやってりゃ金なんてもらえんし。
「自分のやりたい演技」なんてどうでもいい、そんなの売れてから考えたらいい。お金払って観てくれる人が「観たい演技」、CMのクライアントが「やって欲しい演技」、それやって、観客を楽しませたり満足させたり、またはそれ以上のおつりが来るほどの「なにか」を提供したりできなければ「演技のプロ」とは言えないよね。
結局のところ【俳優、モデルはサービス業】。この言葉に尽きるね!
自分いじくるのではなくて、人にサービスするのが仕事だ!
自戒も込めて、くれぐれも忘れないでおこう。
で、多くの場合仕事先から求められるのは、やはり「リアルで自然な演技」。もちろん、ごくたまには「もっと不自然に、大げさにやって」なんてこともあるけど。
じゃあ、なんで不自然とわざとらしいものは求められてないの?
の答えが、大原則の”2”の方だ。
観客は、俳優が「いま何に『注意』を向けているか?」だけに興味を持ち、注意を向けている。たとえば……
- 「目の前でまさに襲いかかってくるゾンビ」
- 「貧乏なクラスメートをいじめてる同級生」
- 「素晴らしいゴールを決めたイケメンの恋人」
- 「銃で撃たれた右足」
- 「油汚れが落ちないお皿」……。
で、「この次どうするんだろう……」ってワクワクして見てるんだよね。
「大げさ」とか「わざとらしい」のはそうじゃなくて「自分に注意を向けちゃってる」。観客はそこに頑張ってる俳優本人が見えちゃって、あらら『作品世界』は台無し……、それが「演技が下手」ってことだね。
ってことでまとめると
「演じよう」ではなく「反応しよう!」
さあ分かって来たかな?
続いてさらに、何かに「注意」を向けたら「反応(リアクション)」が起きる。これはもちろん上手い演技も下手な演技も同じ。
- 下手な演技は「自分のこと」に注意を向けそれに反応して「本人の頑張り」が見えるから、「周りが見えてねえんだよ!」って言われる。
- 逆に上手い演技は「作品世界」に注意を向けリアルに反応してるから「いや、演技上手いねえ!」と言われる。
「反応する」それだけで演技は、いきなり「リアルで自然」に変わるよ!!
ハイ!これ知ってから、僕もホントに楽に演じられるようになりましたよ。オーディションもバンバン通るようになったし。
X ……セリフを話そう!言われた通りに動こう!
○……相手に反応しよう!
重要なのは「反応(リアクション)」すること。自分に注意を向けていじくっても疲れるだけ。周りともからめないし。そういう「自分いじくり系」の演技レッスンって多いよね。「〇〇メソッド」とか「××システム」とか。そういうのって何年やっても、やればやるほど、求められている「自然」から離れて行っちゃうんだよな。結局「からみ辛い人」になって敬遠されるだけ。(何人も見てきましたそういう人。自分もその一人だったんだよなあ……シミジミ)
自分は何もする必要ない。ただそこにいて、反応して、「今そこで行われているドラマ」だけをそこに見せたらいいんだよ。
演技力とは注意力だ!
ということで、もうみんなも「演技力は注意力だ!」と分かったよね。
注意したら勝手に自分が反応し、それを見せたらいいんだから、大元の「注意」をコントロールできるようになればいい。これものすごくすごくない!?今まで誰も発見してなかったんだよ!演技力って一体なんなのか?
演技力はセリフを上手くしゃべれることでも、表情うまく作れることでもないんだよ!
さあ、興奮抑えて、もうちょっとだけ解説するよ。では、ちょっとここで、また引用。
もし、俳優が「うまくいかないかも……」という不安に注意を向けていたら、観客もそれに気づき、そこに「その役」ではなく「俳優自身」を見てしまいます。作品世界は失われ、観客はシラけてしまいます。
その俳優が注意を向けているものを、効果的に観客に伝えるものが「演技の基本フォーム」なのです。つまり、「演技力」とは注意力なのです。
注意するものを意図的にコントロールすることが演技なのです。「手品」のようなものですね。手品師が意図的に注意したポイントに観客は引きつけられ、その隙にトランプはすり替えられて、鮮やかに騙されることになるのです。
これら「7つの基本フォーム」はすべてその「注意力」をどこに向けて、どのように扱えばいいのかについて書かれています
「演技の実力診断」〜「7つの基本フォーム」でプロの演技をチェック! より
ってことだね。「演技力とは注意力」!まさに目からウロコ!!!
台本に書かれている「架空の世界」だけに注意を向けているように見えたら、観客からは「その世界で生きている人」のように自然に見える。それがまさに「そこにいる」ってことだね。
もちろん、あらかじめ決められているセリフや監督から指示された動きとかに「注意」を向けてることも重要。でも、それが観客に分かっちゃうとそのとたん「不自然」になるんだよね。「観客は俳優が注意しているものに注意する」のだから。
だから、そういう「俳優の注意」はていねいに隠しといて、「役としての注意」だけを観客に見せるようにする。それで「リアルで自然な素晴らしい演技」は完成!!!!!
メチャクチャシンプルにもう一度まとめるよ。
リアルで自然な素晴らしい演技
勇気を出して、自分にじゃなく作品世界に「注意」を向ける
→ 反応(リアクション)する
→ それを観客に見せる
= リアルで自然な素晴らしい演技!
「プロ演技の基本理論」わかりましたか?
もうこれだけでも、カンタンに演じられる気になってきたでしょ?
続きを読む: プロ演技の基本理論だぜ!
じゃあ最後に、レッスンで使ってる「演技の定義」。いま言ったことがまとめられてるね。
【演技の定義】
「演技とは、台本通りの外界をそこに創造し、そこから逃げず、それに注意して反応することを見せることで、観客を楽しませる芸術である」
あともう1つ、「演技の公式」ってものがあって、いくつかあるんだけど、その中からたった一つ「14番目」のものだけ。
【演技の公式】
(14)演技の混乱とは、「したい!」が見つからないこと、ただそれだけである。
これがなんで最重要かというと、実際に演技を行う時の「おまじない」みたいなものだからなんだ。どう演じていいか分からないときは、必ずその役が何がしたい!のかわかってない!それを見つけられたら一瞬で混乱はなくなり、楽しく演じられるってこと。
人は何も「したい!」と思わないものには注意を向けない。
何かを「したい!」と思ったからそこに注意を向けるんだ。(by コーチ)
「注意」がうまくできない人は、役の「したい!」から考えていくといいね。「したい!(意図、衝動)」はあらゆるものの中で最も強い「エネルギー」を持つものなんだ。地球上のすべての人工物と同じく、すべての作品、すべての物語はそれを元に作られているんだから。
まあこれについては、あとあとじっくり解説していきます。演じる時にホントにメチャクチャ役立つからね!この知識も。
これだけで、理論完璧!じゃあ次から実践ね。
* よく分かんなかった人は、また最初から読み返すべし!このシンプルな理論が頭に入って初めて訓練の重要性が分かる!というより実践しながら読み返した方が分かるけど。
さあ次は具体的にこれを実践する「7つの基本フォーム」だ!
_〆(・ω・*)……タカシ